服やオシャレが好きでアパレル業界を目指しているという就活生は多いのではないでしょうか。
しかし、就活は「好き」というだけでは面接や選考に通らないということは多々あります。
そこで本記事では、アパレル業界を目指す就活生のために、アパレル業界の最新動向、職種、向いている人、志望動機のポイントなどについて分かりやすくお伝えしていきます。
アパレル業界とは?
「アパレル(apparel)」とは「衣料品」を意味し、衣料品のデザインや製造、販売など衣料品を取り扱う業種全般をアパレル業界と呼びます。 サステナブルの観点から近年、消費者ニーズが増えている古着・リセール・2次流通もアパレル業界の一つです。
限定的に「衣服」という意味を使う場合は「アパレル」、衣服だけでなく、ライフスタイルも含めて広い意味で流行を指す場合には「ファッション」という言葉を使うということを覚えておきましょう。
アパレル業界の最新動向
全体的に価格へのお手頃志向が進んでいる
アパレル製品の供給量は1990年と比較するとほぼ倍増の40億点に達しているにもかかわらず、市場規模はバブル期の15兆円から2010年頃までに10兆円程度に縮小。その後はほぼ横ばいの状態です。衣料品の購入単価は、1991年を基準とすると、6割前後の水準に下落しています。
背景には、消費者の意識の変化があります。バブル期から十数年ほど前までは消費者にブランド志向があり、ファッションにたくさんお金をかける人もめずらしくありませんでした。
しかし、近年はミニマリスト志向やカジュアル志向が強く、高価なものにステータスを感じない人が増えています。SNSなどの普及で自己表現の場や方法が多様化し、ファッションだけが自己表現する方法ではなくなったことも一因でしょう。
コロナ禍でEC化が加速
アパレル業界の動向として見逃せないもののひとつが、EC(インターネット通販)です。
服やファッション雑貨はインターネットで購入する消費者も多く、アパレル市場のEC化率は、2019年まで年々1~2%ほどの伸びで上昇していました。
それが、2020年以降のコロナ禍で、アパレル市場のEC化がさらに加速。市場規模は2兆円超に到達、EC化率は前年より5%以上伸長して19.44%となり、全産業の平均である8.08%を、大きく上回っています。
コロナ禍にEC化が加速した要因には、実店舗の閉鎖や営業時間の短縮、外出を自粛する動きの広がりが挙げられます。
海外からの輸入率が増加
国内のアパレル業界は、繊維事業所数、製造品出荷額ともに大幅に減少しており、海外からの輸入品の割合(輸入浸透率)の増加が顕著です。
経済産業省の「繊維産業の現状と経済産業省の取組」によるとアパレル製造などにかかわる国内繊維産業の事業所数は、約5万カ所(1991年)から約1万カ所(2017年)に減少。製造品出荷額も、約10兆円から約2兆円に減少しています。
一方で、輸入浸透率は年々増加しており、2018年には商品の点数ベースで97.7%が輸入品となりました。
この背景には、国内のアパレル市場規模の縮小と、多くのアパレルメーカーが、商品をより安く調達できる海外に生産拠点を移したことがあります。
市場規模
『矢野経済研究所「国内アパレル市場に関する調査を実施(2022年)」』によると、2021年の紳士服・洋品、婦人服・洋品、ベビー・子供服・洋品などアパレルメーカーや小売業などのアパレル産業の市場規模は7兆6,105億円で前年対比101.3%と前年をわずかに上回っています。
アパレル業界の課題
国内マーケットの縮小
日本国内の衣服に関する消費比率は減少傾向にあります。『総務省統計局「家計調査」』によるグラフの推移は、被服及び履物へ支出額が前年と比較して増加したか減少したかを表していますが、2013年、2014年度を除き、衣料品への支出額はマイナスが続いていることが分かります。
背景には、消費者の低価格志向が進んだことや、「コト」への消費比重が高くなっていることなどが挙げられます。
近年、円安による原材料費のコスト上昇、中国を起点とした物流混乱、ウクライナ情勢の緊迫化による物流費の高騰などアパレル業界にとって向かい風となる状況が続いており、これらの影響を受け、衣服の料金が高騰し顧客離れが更に進行していくのではないかと懸念されています。
余剰在庫・大量廃棄
「余剰在庫」とは、新品でも倉庫に保管されている在庫のことをいいます。
近年、サステナブル志向が高まっており地球環境への配慮の面から、余剰在庫の処分や大量廃棄が問題視されています。
ファストファッションを中心に、大量生産・大量消費・大量破棄などが常態化しており改善が求められています。
「余剰在庫」を抱えるメーカーは、ECサイトやアウトレット店での販売や余剰在庫専門の仕入れ業者に買い取ってもらうなどの対策を行っていますが、解消に至っていません。「余剰在庫」は、環境破壊という問題点以外にも、倉庫費や棚卸にかかる人件費、在庫処分費などのコストが発生するため、企業経営においても課題となっています。
今後の展望
レンタルやフリマアプリなど業態のさらなる多様化
昨今のアパレル業界では、消費者の志向や時代のトレンドが反映された、新たな業態が注目を集めています。
たとえば、定額料金を支払って服やバッグをレンタルできる、airClosetなどのサブスク型シェアサービスがそのひとつです。「お金をかけずにブランドの服を着たい」「かさばるので服を増やしたくない」などのニーズに応えたサービスで、アパレル製品を所有することにこだわらない消費者から支持されています。
そのほか、不要になった服やバッグ、アクセサリーなどをCtoCで取引できる、メルカリやラクマなどのフリマアプリも人気です。
海外市場への進出
日本の生地は、繊維の性能を高める技術において世界をリードしており、日本製品は世界でも競争力があります。また、お手頃価格志向が進む国内市場と相反して、海外にはファッションに対して高い購買意欲を持った消費者が多くいます。コロナ禍以前には、訪日外国人客が、国内の多くの高額商品を消費していました。
現在、アパレル業界の各企業が特に強化しているのが、中国、東南アジアをはじめとしたアジアへの販路拡大です。また、海外に実店舗を展開するだけでなく、海外向けECサイトの開設をおこなう企業も増えています。
バーチャルコミュニティ市場への参入
アパレル業界ではバーチャルファッションアイテムの開発に乗り出しています。
ユーザーは、バーチャル上で服を購入し、シーンに応じてアバターに着替え、バーチャル上での展示会やファッションショーに参加したり、SNSに写真をアップしたりすることができるようになります。このようにアバター市場に参入することで、新たな収益基盤の確立が期待されており、今後もIT技術の進化に合わせて、アパレル業界も変革していくこととなるでしょう。
アパレル業界の職種
販売員
販売員は、実店舗で商品の販売をおこなう仕事です。もっとも顧客に近い立場にいるポジションと言えるでしょう。アパレル業界では、総合職採用でも、まずは販売員に配属される企業も多いです。
販売員としてキャリアアップする場合には、まずショップの最高責任者であるショップマネージャー、さらに、複数の店舗を統括するエリアマネージャーへとステップアップするのが一般的です。ショップマネージャーやエリアマネージャーは、店舗や地域の特性を理解したうえで、売上拡大のための戦略を練る必要があります。また、スタッフの育成も大切な仕事です。
デザイナー
デザイナーは、アパレル製品のデザインをおこなう専門職です。市場やトレンドの調査を踏まえてデザインコンセプトやイメージを発案し、デザイン画に起こして商品企画をおこないます。サンプル作成のための縫製仕様書の作成や素材の選定、発注やコスト交渉、納期管理も担当します。ブランドが開催するファッションショーや、展示会の段取りをおこなうこともあります。
デザイナーには、素材や生地、染色に関する深い知識やトレンドをキャッチする感度の高さ、センスが求められます。また、他の仕事をおこなう人と協力して製品を作り上げていくためのコミュニケーション能力も必要です。
パタンナー
パタンナーは、デザイナーによるデザインをもとに、衣服のパターン(型紙)を作る専門職です。いわば、服の設計図を作る仕事です。
デザイナーと同様、服飾専門学校を卒業した学生を採用する企業が多い職種です。パタンナーには、パターン作成の技術と素材や生地に関する知識、CADスキル、正確性が求められるほか、デザイナーの意図を読み解いてパターンに反映する能力も必要です。
バイヤー
バイヤーは、市場調査に基づいて、店舗で販売する商品の買い付けをおこなう仕事です。国内だけでなく、海外にも足を運んで自社ブランドのイメージやポリシーとトレンドに合う商品を見つけます。
買い付けに伴う商談や納期管理、販売計画、在庫管理も担当し、買い付けた商品に関するコーディネート提案や、販売員への勉強会を実施することもあります。
利益をあげるには、売れる商品を買い付けなければなりません。仕入れた商品がどのくらい売り切れたかを示す指標である消化率を元に、検証を重ねて次の買い付けに活かします。
マーチャンダイザー
マーチャンダイザーは、ブランドがシーズンで販売する商品全体を統括する仕事で、ブランドの方向性を決める重要なポジションです。
まず市場の動向やトレンドを分析して、売れる商品を予測します。次に、デザイナーと一緒にどんな商品を打ち出すか、デザインやカラーを決め、商品内容の構成をまとめます。店舗ごとの商品配分や販売計画、価格設定、予算管理などもとりまとめ、生産計画を組み立てます。
販売開始後、商品の売れ行きを確認・分析したり、追加生産の計画を立てたりすることも担う販売責任者であるマーチャンダイザーには、幅広い知識が求められます。
生産管理
生産管理は、商品製造における全ての工程を管理する仕事です。企画した商品が無事販売できる状態になるまでを管理する、重要なポジションです。具体的には生産計画を立てて工場を選定・発注し、納期管理などのやり取りをおこないます。
自社工場で生産する場合には、おもに商品がパタンナーの起こした型紙通りに製造されているかどうかをチェックします。品質管理、原価交渉、資材調達や伝票作成なども担当します。
広報
商品やブランドをより多くの人に知ってもらい、親しんでもらうためのPR活動を行う業務です。
具体例)雑誌のタイアップや撮影、取材立会い、SNSの運営など
求める人物像
トレンドに敏感である
流行の移り変わりが激しいアパレル業界であるからこそ、常に最新のトレンド情報を収集しておく必要があります。服だけではなく、幅広いジャンルのトレンドに関しても情報収集しておくと様々な場面で活かすことができるため、トレンドに敏感で色んなジャンルにアンテナを張ることのできる人はアパレル業界で重宝されるでしょう。
ファッションが好きである
かなりシンプルですが、やはり「ファッションが好き」という気持ちはアパレル業界で働くにあたって重要なスキルの一つです。アパレル製品を作り上げるにも、販売をするにも、顧客にファッションを提案するにも、ファッションに興味がなければ成り立ちません。もちろん、好きという気持ちだけでは務まらない点もありますが、逆に好きだからこそ頑張れることも多いはずです。
【就活生向け】アパレル業界ランキング
※売上高ランキングは、2022~2023年度の各社の有価証券報告書のデータをもとにキャリアトラス内にて作成しています。
※各社の有価証報告書(ファーストリティリング ・しまむら ・アダストリア ・ワールド ・ワコールHD)
ファーストリテイリングが他の企業との差を広げており、国内アパレル業界の中では、独走状態です。グローバル展開も好調で、売上は4期連続で2兆円を超えています。
志望動機のポイント
なぜ業界を志望するのかを明確にする
華やかなイメージがあるアパレル業界ですが、実際には肉体労働をすることもあったり、繁忙期や展示会、納期の直前には残業が発生したりと、決してかっこいいことばかりの仕事ではありません。
それでもアパレル業界で働きたい気持ちがどこから来るのか考え、実際にリストアップして書き出してみると良いでしょう。働きたいと思うに至った具体的なエピソードを振り返っておくのも効果的です。
業界の中でもなぜその企業なのかを述べる
その企業が生み出すブランドや商品が好き、というが理由である場合も多いかもしれませんが、それだけでは相手に明確な理由として伝わらないため、なぜ好きなのか、具体的に述べることが大切です。気持ちを言葉にすることを意識して、深く掘り下げてみましょう。
自分の強みをどう活かせるのか
自分の強みを企業でどのように活かせるか伝えることで、入社後の姿をイメージしてもらいやすくなります。企業に「この人なら、こんな風に自社で活躍してくれそう」といったポジティブなイメージを持ってもらうことは、非常に重要です。
自分の強みと関連付けながら、入社したらどのように働きたいか具体的に伝えることがポイントです。
企業研究でライバルに差をつけるためには
企業ブランドのターゲット層まで調べる
企業研究をおこなう際には、企業やブランドのホームページ、SNS、ブログなどで情報を集めるのが基本です。会社概要や取り扱っている商品について知ることも大切ですが、なかでも押さえておきたいのが、ブランドのターゲット層です。ターゲット層を明確にすることで、企業やブランドがどんな点にこだわって商品展開をしているのかなど、消費者目線ではわからなかった点が見えてきます。
企業にとって、自社ブランドのファンは有難い存在ですが、就職活動で一歩リードするには、消費者目線、ファン目線ではなく、働く側の目線で物事を捉えることが大切です。働く側の目線を志望動機に盛り込むことができれば、ファンではなく、自社で活躍してくれる人材として、より評価されやすくなります。
ブランドコンセプトや世界観を徹底的に把握する
ブランドコンセプトや世界観には、ブランドの強みやこだわりが反映されています。しっかり勉強すれば、より深くブランドを理解することにつながります。
志望動機にブランドコンセプトや世界観に対して感じた魅力や共感を盛り込めば、ブランドの理解度をアピールでき、「好き」や「憧れ」といった気持ちにも信頼性が生まれるでしょう。反対に、ブランドコンセプトや世界観にそぐわないことを言ってしまうと、ブランドに対してそれほど興味がない、熱意がないと判断されてしまうため要注意です。
まとめ
時代の流れの影響を受けやすく、変動的な性質を持つアパレル業界は、今まさに転換期を迎えています。業界の最新動向を知り、現状抱えている課題や今後の展望について、しっかり把握して選考に臨みましょう。
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